メタルギタリストを志す人間にとって、EXODUSのギターサウンドは到達点の一つと言えるのではないだろうか。
ポール・バーロフのうすら気持ち悪いヴォーカル、トム・ハンティング&ロブ・マッキロップの何処か軽快なリズムの上に乗るゲイリー・ホルト&リック・ヒューノルトのザックザクギターは、METALLICA、SLAYERら同世代バンドらのギターサウンドとは違う感触を獲得、LAAZ ROCKIT、TESTAMENTらと共に「ベイエリア・クランチ」という代紋の元、「ギターは刻むもの」という教義に心酔するギター小僧共を現在進行形で増やし続けている。
その中の一人にして、ギター習得における最初の関門、「Fコード」なんぞ知ったことかと言わんばかりに6弦の開放弦をズクズク言わせる事に執着していた当時ポンコツギタリスト高校生の私は、「もっとはやくひきたいのら!」という願望の元、右腕にオモリを巻き付けてひたすらダウンピッキングという「巨人の星」の星一徹的トレーニングを開眼。
日々鍛錬に勤しむも、ある日遊びに来た友人に「それ意味あんの?」と言われ、我に返る…というのはいい思い出である。
今考えれば、コードをジャカジャカ鳴らすとこから始めりゃよかったのにとも思わないでもないが、「メタルギタリストたる者ダウンピッキングを極めずに何とする!」というスローガンを本気でロマンだと信じ込んでいた。
しかし「ロマン」と「馬鹿」は同義語であると気付いたのはずっと後のことである。
この世には様々な音楽があり、その数だけギターの弾き方がある。更にギターという楽器は弾き手、機材次第で音色が千変万化するあまり類を見ない楽器である。
それを薄々自覚しつつも黙々と星一徹イズムを実践してきた私は、ありとあらゆる手法でギターを操る他のギタリストが只々眩しく見えた。心がブレブレだった。
彼等の中におわす星一徹は、一体どのようなトレーニングを課したのか?少なくともオモリを付けたバカ・トレーニングは実践していないと思われる。
その内に「これでいいのか?」という知恵がついたバカボンのパパのような自問自答を繰り返すくらいにブレにブレていた私は不安に駆られ、星一徹依存から脱却、様々なスタイルを練習・吸収しオールラウンドなプレイヤーに成長・・・してる訳もなく、未だに中途半端な弾き手に甘んじている。
しかし、いい大人になった現在、「FABULOUS DISASTER」のギターサウンドを聴くと、不安に駆られる必要も無かったんじゃないのかという気がしてくる。
「BONDED by BLOOD」から「FABULOUS DISASTER」までのサウンドの変遷を聴けばわかるが、明らかにギターサウンドの殺傷能力が作品ごとに上がっている。
"fabulous disaster" "the toxic waltz" "cajun hell"そしてwarのカヴァー"low rider"など、本作はやたらリズム面の充実度が著しい。
それがEXODUSならではの軽快さやカラッとした明るさとしてアウトプットされており、リズム隊とギターチームのコンビネーションとシンクロ具合が本作をもって完成したことが窺える。
彼等は彼等なりに「己の中の星一徹」に従い、研鑽を続け、彼等の中に住むバカボンのパパが「これでいいのだ!」と免許皆伝を出した結果、「FABULOUS DISASTER」の様なナタの重さとカミソリの斬れ味を併せ持ったサウンドを会得したのである。
私が中途半端な弾き手なのは何のことは無い、「これでいいのだ!」と大手を振って言えないほど、私の中のバカボンのパパが未成熟だっただけである。
要は徹しきれなかったのである。
練習内容はともかく。
ギター小僧諸君、己の中に星一徹とバカボンのパパを飼え!
そして宵の明星の如く輝くギタリストの星となるのだ!
取るに足らない事でも、愚直に永く続ければ新たな地平が見えてくるという教訓ではあるが、やり方はよーく考えた方がいいと思う。
さもないとオモリを腕に巻くハメに…。

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