全てのベーシストに聞きたいこと featuring 「PORK SODA」 by PRIMUS

5/01/2024

t f B! P L



全てのベーシストに前から聞きたかったことがある。


「ベースを始めた動機ってなんですか?」と。



個人的な考えだが、ベースという楽器はかなり不遇なイメージがある。

バンドサウンドにおいて勿論なくてはならない楽器ではあるがその実、ギター、ドラムに比べてどういう役割なのかパッと見分かりにくいというのがあるんじゃなかろうか。

音楽にまるで興味のない知人にこんな話をされたことがある。


ロックとか聴いててさ、ギターがすごいなーとか、ドラムがカッコイイなーとか、そういうのは何となーくわかるんだけど、ベースって何なの?そもそも必要なの?いらんことないか?


地球上のベーシストを全て敵に回したこの発言に、ギタリストである私は門外漢ではあるが、テンパった上にどもりながら答えた。

いやいやいやいやいや、あ、あなたベーシストいなかったらバンドというものは成り立たないのよ?え、縁の下の力持ちなのよ?


いや、聴いててもわかんねーし。

IRONMAIDENだってスティーヴ・ハリスのバッキバキベースがあるから成り立ってんのよ?JUDASPRIESTだってイアン・ヒルがいるから成り立ってんのよ?

いや、知らねーし。


例えがまずかったのか一蹴された。

大英帝国が誇る二大メタルバンドを持ってしても音楽ファンではない人間には無力であった。

スティーヴ・ハリスのベースサウンドの独特さや、イアン・ヒルの恐ろしく無駄のないベースプレイを説いて彼を納得させるのは、小錦にソロバンをはじかせるくらい難しい事だと感じた。
もっと分かりやすい例はないものか。

ド、ド、ドリカムの中村正人おるやろ?あの人おらんかったら

中村正人って…、…あぁあの覚醒剤かなんかで捕まった人?


それはキーボーディストの方。


ここまでの私の「あの人がおらんかったら」論法に飽き飽きしてきたのか、彼は既に興味を無くしているように見えた。

だいたい、ドリカムを聴いててベースを意識したことも無い私がドリカムを語るのは愚策である。

彼を納得させる決定打がないまま、その日から「ベーシストの是非」という呪いにも似た問題提起について考えさせられる日々が続くことになる。


そもそも人を納得させられるほど私がベースという楽器について熟知していないのも問題である。

そこで理解を深める為に、「ベース  役割」でググってみよう。


"ベースの一番の役割は音域的にドラムとギターなどの隙間を埋めることです。ベースはメロディーとリズム両方を司る楽器なので非常に重要な意味を持っています。特にドラムの叩くリズムを、音程のあるリズムとして他の楽器に中継する役割があり、これだけでもベースの必要性がわかるかと思います。"


それまで何となく「このベースラインカッコイイ」ぐらいに思っていたベースの必要性がほんの少しわかった気がしないだろうか。
試しにギターとドラムのみの音源を聴くと、やはり違和感がある。物足りないというか、ギターが浮いている…という印象である。

そこにベースが加わって初めて三位一体の世界が成立し、鳥は歌い、花は咲き乱れ、永劫の平穏が約束されるのである。

歴史上の様々なバンドを見ても、司令塔やリーダーにベーシストが多いのも頷ける。



とはいえ、やはり地味なイメージは拭えないのが実情である。

ものっそい偏見だが、
ギターの音はピロピロ・ギャンギャン・ズンズン・チャカチャカ・キラキラ・ジャカジャカ
ドラムの音はスタスタ・カンカン・ドムドム・シャンシャン・チンチン

擬音で表すとこれだけ多彩なのに、ベースを表す擬音といえば

ボンボン。

これがほとんどな気がする。


冒頭に申し上げた通り、私は疑問でならない。

世界中の少年少女達がベーシストを志すにあたり、一体何に憧れたのか?
音楽を聴いて微かに聴こえてくるボンボンという深遠な響きに神の啓示を受けたのか?

ベーシストをディスっている訳ではない。
ベースという楽器は一聴して魅力を感じにくい楽器である。
前述のギターとドラムの橋渡し云々を正確に理解して、バンドにおける縁の下の力持ち的いぶし銀な役割に憧れてベースを始めたというのならば、それはそれでよかろう。

しかし憧れるにはあまりにも渋すぎる要素が多すぎるのだ。
ベーシストを目指している少年少女達は、実は違いのわかるダバダーな大人だったのか?


私とて最初からベースの魅力を知っていた訳では無い。
恐らくメタルを始めとする激音ばかりを聴いてきたせいか、ギターばかりに目がいって永らく他のパートの重要性に気づかなかったのだ。

METALLICAの「…AND JUSTICE FOR ALL 」などを聴いてても、ほとんどベースの音が聴こえない事もあり、余計に私のベースに対する理解は百万光年ほど遠のいてしまった。
ジェイソン・ニューステッドが当時ハブられていたことはともかく。


そんな私がベースという楽器を意識しだしたのは中学生のころである。
当時重度のMTVジャンキーだった私は「ヘッドバンガーズボール」をアホ面でボケーと見ていたところに突然現れたPRIMUSという得体の知れないバンドに目を奪われた。

”Tommy the Cat”なるその摩訶不思議なPVは、それまで触れてきたビデオとはまったく異質な手触りで私を翻弄したのである。

アメコミ調のアニメに時折挿入される怪しいバーテンダーの語りを伴ったヴォーカルにも衝撃を受けたが、それまでのロック音楽の範疇を明らかに超えたベースの暴れ方にスラップのペの字も知らない小僧は猛烈に舌を巻いた。

何をどうやったらあんな音になるのかサッパリな上、どこか人をおちょくった様な世界観を持つこのレス・クレイプールというベーシストに俄然興味が湧いた私は、早速「PORK SODA」を購入。
タイトルそのまんまのケッタイなジャケ写に戸惑いつつハラハラしながら再生ボタンを押す。


ドゥクブドゥクブドゥクブドゥクブドゥクブドゥ!」


無理矢理擬音にするとこんな感じである。
異論は認める。

SAILING THE SEAS OF CHEESE」より低音の密度が上がったことにより、さらにレスの変態的ベースの主張が凄まじい。他のパートでは逆立ちしても考えられないであろうベースならではのリズム&リフ捌きを聴くと「ベースはメロディとリズム両方を司る」という言葉に異常なほど説得力を感じる。

明らかに脇役に徹してはいるが、ベースだけではダークになりかねないこの世界観をどこかユーモラスにしているのはレスに負けないぐらい変態テクニックを誇るラリーのギター・ティムのドラムの手腕による所が大きいのではないだろうか。


かくしてPRIMUSにより個人的なベースの概念を大きく覆された私は、カッコイイと思ったモノは真似しないと気が済まない厨二病という病の重篤な患者だったことも手伝って、始めたてのギターを手に見様見真似でスラップを練習し始めた。

当然、正しいスラップの練習の仕方なぞ分かるはずもなく、所有していたショボいアンプから「ぺちんぺちん」という音が個室に鳴り響く。
その音はまるでプラ製の物差しで尻を叩くかの如く残酷なまでにペラい音であった。つーかせめてベースでやれ。

その後もやはりMTV中毒から抜け出せなかった私は、ことある事に突然現れた〇〇によって脳内ブームは変わりゆき、ベースの事など記憶のはるか彼方へと追いやられていった。


私にとってのベースの情熱はそんなもんであったが、PRIMUS、そしてレス・クレイプールの衝撃は未来の大物ベーシストを生み出す可能性を大いに秘めている起爆剤であることは間違いない。

やはりいつの世も、楽器を問わず先達の偉大なプレイヤー達の影響を受けて、いつの日にかステージに立つ事を夢見て切磋琢磨する・・・というのが当たり前なのだろう。
私もギターを始める前にレス・クレイプールに出会っていれば、ベーシストになり得たかもしれないのだ。



でもなぁ。ボンボンゆってるだけじゃ憧れないと思うんだけどなぁ…。


結局そのあたり、現役ベーシストの皆さん、どうなんですか?





人気ブログランキング

人気ブログランキング

アーカイブ

ハードロック・ヘヴィーメタルランキング
人気ブログランキング

最新記事

QooQ