映画「ホームアローン2」にこんな場面がある。
主人公であるケビン君が、プラザホテルにて黒いコートのオッサンにロビーの場所を尋ねるシーン。
このオッサンは、この場面に1回ポッキリしか出てこないが、妙に印象に残っている。
この黒いコートのオッサンが、後にアメリカ合衆国の大統領になるとは、誰が予想したろうか?
その黒いコートのオッサンこと、トランプ大統領のあくどい商売的政治手腕に世界中が戸惑いまくっている。
世界経済、外交問題だけではなく同盟国、人権問題、環境問題、安全保障、エネルギー問題などありとあらゆる分野に影響を与えるだけに、国内外から良くも悪くも現在進行形で注目されているオッサンである。
連日報道ではやれ関税引き上げだのロシアとウクライナの喧嘩に首突っ込んだだのイスラエルとイランの喧嘩に首突っ込んだだの、正直アンタがさらにややこしくしてんじゃねーの?と思わないでもないニュースが多い気もする。
暗いニュースがタダでさえ多い中、さらにうっとおしい話題ばかり提供してくる厄介なオッサン・・・というのが大方の日本人の見方ではなかろうか(超偏見)。
選んだのはアメリカ国民なので、日本人の我々は口出ししようもないんだが、それでも合衆国大統領ともなると我が国のみならず、世界中にも影響するのだから、ちょっとくらいは口出してもいいんじゃないかとも思う。
とにかく、すれっからしの商売人が権力を持ち、政治と商売を混同したおかげで世界中が困惑、混乱、迷惑しているといっても過言ではない状況なのだ。
ちょっと待てよ、この状況なんか前もあったような気がするぞ・・と思ったら、そういやジョージ・w・ブッシュの在任中も似たようなことがあった。
2001年の同時多発テロにて国民の心が一つになったはいいが、タリバン政権を打倒したら余計アフガニスタンの治安が悪化した例のアレとか、イラクに言いがかりをつけて戦争起こしたけど結局、大量破壊兵器なんてどこにもなかった例のソレによって、世界中から総スカンを食らったブッシュ政権は、何をトチ狂ったか再選を目指すという暴挙に出た。
これに黙ってなかったのがミュージシャン連中である。
ニュージャージーの大親分BRUCE SPRINGSTEENをはじめ、NEIL YOUNG、R.E.M.、BEASTIE BOYS、JOHN MELLENCAMP、PEARL JAMなど、大物アーティスト達がジャンルの垣根を越えて、ツアーや新曲発表という形で反ブッシュの旗を掲げ始めたのである。
今現在も恐らくハードコアな共和党支持者であらせられるTED NUGENT以外の、もはやアメリカのミュージシャンのほとんどが反ブッシュ潮流に乗るも、彼らの主張むなしくブッシュは再選してしまったわけだが、この結果を見るに音楽は現実に何ら影響を及ぼさなかったのだろうか?
否、だと私は信じたい。
現実的に変化をもたらすことは確かに難しいかもしれない。しかし、決して無視できない力があるからこそ、ミュージシャン達は音楽をもって訴え続けるのである。
現に権力者・体制側がミュージシャンを危険視して検閲や圧力をかける例は枚挙に暇がない。(パンクへの警戒、PMRCの設立etc.)
そうした力を信じて活動するRAGE AGAINST THE MACHINEやSYSTEAM OF A DOWN、MINISTRYらの作品群は、ロックが持っている「民衆の怒りの声」としての側面を最大限に武器化した音楽性が特徴だが、特に「共和党絶対殺すマン」ことアル・ジュールゲンセン率いるMINISTRYは、武器化どころか音楽兵器と呼んでも差し支えないほどの攻撃性を呈している。
特にブッシュ政権時の怒りはすさまじく、任期中に三枚もの作品をリリースし徹底的に政権をこき下ろしたという事実は、ロック史に永遠に残すべき偉業である。
アメリカの社会風刺を作品を通じて表現し続けてきたMINISTRYの多数の作品の中で、トランプ政権の現状を鑑みた作品として「AMERIKKKANT」を挙げるべきなんだろうが、あえてここでは「RIO GRANDE BLOOD」をレビューしようと思う。
だってこっちの方がカッコイイんですもの。
一聴して分かることだが、MINISTRY史上最もヘヴィな作品ではなかろうか。
お約束というかもはやお家芸とも言える、時の権力者の声のサンプリングから始まるタイトル曲"Rio Grande Blood"の痛烈さは、ここまで直接的な表現をすると検閲が黙ってないんじゃないかとハラハラさせられることうけあい。(実際、保守派の多いテキサスあたりのCDショップでは店頭から撤去される可能性があったらしい)
私は高度なテロリストの戦術を採用し、私は危険な、危険な武器を所有する危険な、危険な男である。
アメリカの石炭資源と外国の原油を使い果たしたいと思っている。
私は大量破壊兵器であり残忍な独裁者。
私は邪悪だ。
このサンプリングだけでも拍手喝采モノだが、続くスラッシュメタルそのものと言っていいほどの激烈さを伴って突進してゆく"Senor Peligro"、
「嘘を信じるな。自分の中のアタマで考えろ」という自己啓発にして、ヘヴィすぎる真のパンクソング"Lies Lies Lies"、
パレスチナ人の悲哀を唄った"Palestina",
ワシントンを「権力のサーカス」、政治家達を「アホな道化師」呼ばわりし、ライオンの餌にしようとうそぶく"Ass Crown"
など、何もそこまでと心配するほどの攻撃性を持ったメッセージを、それまでの作品に比べてよりバンドサウンドに拘ったであろう超ヘヴィな音像に乗せてアジる様は、よっぽど当時の政権が腹に据えかねたのではないかと推測する。
音楽もそうだが、アートワークもかなり過激である。
油田の前でメロイックサインをキメるブッシュ、裏ジャケには右手に給油ノズル、左手にライフルを持った血涙を流す自由の女神という、共和党員並びに保守派全員にガチで喧嘩を売りかねない痛烈さ。
これぞアル・ジュールゲンセン、これぞMINISTRYの真骨頂とも言うべき劇物であり、ロックが本来持つ反権力・反体制という側面をこれでもかという程に濃縮して叩きつけた金字塔として神聖視されるべき作品である。
しかし、これ程の作品をもってしても、世界の現状は残酷なまんまである。
世界各地で紛争が起き、ホワイトハウスの玉座には商売人が座り、貧富の差は拡大するばかり。
音楽がただのエンターテイメントとして消費されがちな今日、「ロックで世界を変える!」という意気込みは、もう時代遅れなのかもしれない。
それでも、ヤク中とアル中を両立させて活動してきたアル・ジュールゲンセンには、今後とも頑張ってもらいたいものである。体ボロボロかもしれんけど。
これからの音楽は、ロックは、人の心は動かせても、政治・世の動きまでは動かせないのかもしれないという諦観、絶望感は若干感じているところはある。
しかし、ロックが誕生した時から持っていた民衆の怒りの代弁者としての側面は、未だに誰にも侵せず、確かに今も息づいているのである。
アホな権力者共が世界を乱しがちな今、決して対岸の火事ではないということは、そろそろ平和ボケしている我々日本人も肌感覚として危機感を持ち始めている頃だと思う。
直近でも、失言だの学歴詐称だので足元をすくわれる政治家(笑)のなんと多いことか。
その体たらくで「我々に全幅の信頼を」だと?
いささかアホが多すぎやしませんか。
7月20日の参院選。
ニッポンは、あなたは、何を選択するのだろう?
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