人生のエンディング曲を考える featuring 「THE FUNERAL ALBUM」 by SENTENCED

3/16/2024

t f B! P L
 

先日、友人達との酒の席にてたわいもない話をしていた所、こんな話題が出た。


「自分の葬式をやるとしたら、BGMどうする?」


恐らく音楽ファンにとって永遠の裏テーマである。

涅槃の世界へ旅立つ際のBGMを自ら決めたいという欲求は、散歩中でもイヤホンで音楽を聴きたい!という感覚とそう変わらないのではないだろうか。

葬儀というものは国・地域によって千差万別。
国によっては鳥さんに魂を天国にパタパタ運んでもらったり、ダンサー呼んで明るく楽しくドンチャンやったり、調べてみると「死」というものの捉え方が各地で違ってて中々興味深い。

とはいえ、ここはお箸の国ニッポン。

「空気を読む」という事が漢字の読み方よりも重要とされるこの地でダンサー呼んで楽しくやった所でYouTubeのネタにされて叩かれるだけである。

小心者の私としてはある程度「お葬式ムード」に乗っ取って決めたい所である。


勿論、その場にいた参加者達が棺桶に入る予定は全くない。
それぞれ年齢相応の持病は抱えてはいるが、痛風・肥満・腰痛・ヒザの痛み・老眼・鼻づまり・アル中・水虫・ハゲ・ケチ・毛深い・口が悪い・足が短い等、死に直結する症状は殆どない人間ばかりである。

そして「新しい魔法少女っぽい呪文を考える」とか「ゴリラとカバどっちが強いか」など、普段からロクな会話をしない集団である。
いつになくシリアス気味なお題にレモンサワーを流し込みながら考え込んだ。


プヲタの参加者A(体型だけはビッグバン・ベイダー並)が口火を切る。

えーと、アレだ…橋本真也の"栄光への独白"がいいな

"破壊王"の異名を取るレスラー橋本真也氏のデビュー作「橋本元年」からの曲である。

曲というより橋本氏がボソボソと棒読みでつぶやくこのポエム、氏の葬儀で流れていたらしい。それを踏襲してのチョイスだろうが、ただのプヲタの葬儀で流すにはちょいと荷が重すぎるんじゃないかとも思う。

恐らく破壊王の偉業を称えるために葬儀で流れたと思われるが、Aの偉業といえばハイキックの真似事をして股関節を痛めたのに、家から近いという理由で耳鼻科に行ったくらいである。Aよ、何故だ。

「偉業が足りない」という理由で全員一致。Aの希望は却下された。

続いて参加者Bの選曲。

アタシは"悲しき願い"かなー

…どのバージョンだろうか。
サンタ・エスメラルダのバージョンであれば、それこそダンサー呼んで楽しくなってしまう事うけあい。そこにユマ・サーマンルーシー・リューが現れて決闘を始め
、血みどろの葬儀になるに違いない。

メタラーの身としては、重さも雰囲気も葬儀向けなドゥームメタルバンドPLACE of SKULLSのバージョンを推したい所ではある。

しかし、Bはここは無難に尾藤イサオバージョンをチョイス。
そもそも葬儀っつーか、ほとんど失恋ソングなんですけど…。


こうして各参加者が思い思いのBGMをセレクトする中、私は自分の音楽的選択肢の無さに絶望していた。

ものっそいベタな選曲ではあるが、酩酊状態のアタマではMETALLICAの"Nothing Else Matters"ほぼ一択であった。
統計を取ったわけでもアンケートを取ったわけでもないが、恐らく地球上のロックファンが選ぶ葬儀BGMトップ10入りは果たすであろうこの曲しか浮かばなかったのは、日頃から物騒な曲ばっか聴いてるツケが回ってきたということなのだろう。

「葬式」というキーワードだけでCATHEDRALの地獄ドゥーム曲"a Funeral Request"が一瞬でも頭をよぎった事を呪わしく思った。

私はアルコールに侵された少ない脳ミソを総動員した。

葬儀向けで悲しくてそんなに激しくなくて聴きやすくて音楽的で神秘的で象徴的でエレガントでシンプルでプログレッシブでトミー&ジーナがリヴィン・オン・ア・プレイヤーなタマゴのヒヨコがピーヨコちゃんな、そんな奇跡的な曲を脳内で探しに探した。


そして脳内のCDの山を崩しに崩して発見したのがSENTENCED「The Funeral Albumである。
こんなどシンプルなタイトルなのに何故思いつかなかったのか。


HR/HMというジャンルは比較的「泣きメロ」や「哀メロ」の割合が多いジャンルである。

激しい曲調というのはそれだけで激情を表現しやすく、泣きのメロディの親和性が高い為だと思われるが、頭のてっぺんから爪先まで慟哭と絶望を唄うこのSENTENCEDというバンドは、中々気軽には聴けないリアルな悲しみを身にまとっている。

他のバンドがあくまでもジャンルとしてのHR/HM的な泣きのメロディを演出するのに対し、SENTENCEDの場合フィンランドという出身地がそうさせるのか、演出などではなく遺伝子レベルで悲しみを表現する事を運命付けられている様に感じる。


フィンランドの極端な天候が、俺達のやることなすこと総てに何らかの影響を与えているんだろう。ここでは3つの事しか出来ない。1つ目はテレビを見る事、2つ目は自殺する事、そして3つ目はミュージシャンになる事だ。だから、俺達はバンドを組んで自殺することについて歌うことにしたのさ」 
(the cold white lightライナーノーツより)

これはギタリストのサミ・ロパッカの弁である。

全てのフィンランド人がそうではないと思うし、土地柄としてそういう気分になるのかも知れないが、それにしてもここまで彼等を絶望に駆り立てるモノは何なのか?
日本人である私には想像もつかない。

そしてこの作品、タイトル通り彼等の葬送となった作品である。

「我々は宙を落ちる葉っぱ以外の何者でも無い」と唄う何の救いもないバラード"We are But falling Leaves"、

ブルージーだがどこまで行っても破滅的でヤケクソな"Dispair-Ridden Hearts"、

完全無欠の葬送曲"End of the Road"

前述の通り、気軽には聴けないアルバムである。
気分によっては首を吊りたくなる程の暗さ、冷たさを誇るこのアルバムこそ葬式BGMに相応しいのではなかろうか。


というわけで私の選択希望BGMは"End of the Road"と脳内会議で決まったその時、いつもクールな参加者Cが口を開く。


……おどるポンポコリンで。


一同………………。



この日の優勝はCに決定。







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