ロック史には数多くの女性ミュージシャンが登場する。
古くはジャニス・ジョプリンからスティーヴィー ・ニックス、メタル界隈ではドロ・ペッシュ、グレイト・カット、サビーナ・クラッセン…など、さながら柔道部の部室の如く汗臭いむくつけき男ばっかのメタル業界で、一服の清涼剤としての役割どころか男共を凌駕するほどのカリスマ性を持って活躍した女性ミュージシャン達がいたからこそ、今日のロックは栄えたのである。
その中でも、メタル界最強のアマゾネスとの呼び声高いキンバリー・ゴスをご存知だろうか。
世紀末に突如現れた超新星CHILDREN of BODOMの首魁にして北欧メタルの貴公子アレキシ・ライホ、
MERCYFUL FATE、そして後のARCH ENEMYでの大活躍が知られる巨人ベーシストシャーリー・ダンジェロ、
この北欧メタル界のスーパースター3人を擁するSINERGYというメタルバンドのヴォーカリストに鎮座していた女性である。
この北欧メタル界のスーパースター3人を擁するSINERGYというメタルバンドのヴォーカリストに鎮座していた女性である。
麻雀でいうならば大三元字一色ダブル役満、盆と正月とハルマゲドンが同時にやってきたと言っても過言ではない泣く子も黙る楽器隊ではあるが、キンバリー・ゴスという人物を女性である事はおろか写真すら見た事ない当時の私は
「このメンツであればヴォーカルもデス声に違いねえ!」
という勝手な期待をしていた。
「このメンツであればヴォーカルもデス声に違いねえ!」
という勝手な期待をしていた。
CHILDREN of BODOMの台頭、高みを目指して奮闘していたIN FLAMESなど、おりしも群雄割拠の北欧メロデス隆盛期である。
メンツから考えてクオリティは保証されているだろうし、恐らくネオクラシカル路線の慟哭系メロデスになるのではと高を括っていたのだが、リリース後、大いに裏切られることになる。
JUDAS PRIEST的でもなくIRON MAIDEN的でも無い。
かと言ってジャーマンメタル的でもなく、メロスピでもなんでもない。
しかし、形容するならば明らかに「王道の欧州ヘヴィメタル」としか表現出来ないサウンドがそこにあった。
小手先の技術ではなく熱量・魂をそのままぶつけてくるスタイルに、全てのロックヴォーカリストを目指す人間が手本にすべき真髄を見た思いである。
かと言ってジャーマンメタル的でもなく、メロスピでもなんでもない。
しかし、形容するならば明らかに「王道の欧州ヘヴィメタル」としか表現出来ないサウンドがそこにあった。
しかしそこかしこに溢れるメロディの奔流・巧みな曲展開は、メロデスを経過した者ならではのドラマ性を確かに感じさせるものである。各メンバーがメインのバンドで培った技術、経験の結晶が雄弁に、容赦なく楽曲に反映されている。
そしてなんと言ってもそれらをバックに駆け巡るキンバリーのヴォーカルの迫力である。
それまでの女性ヴォーカリストとは一線を画すパワフルさと勇壮さ。
まるでワンダーウーマンか女性版コナン・ザ・グレートと言わんばかりに鎧と剣で武装した女傑が決闘しているかの如き勇ましい歌声は、ヘタなハイトーンヴォーカリストを置いてアバラ骨が見えてしまう程に貧弱になった凡百のド三流自称メタルバンド共を余裕で蹴散らすくらいにマッシヴでタフな歌いっぷり。
キンバリーの「カモォォォォン!!!!」というシャウトに人類は皆跪いた。シンプルだが、これまでにありそうでなかった曲展開によってメタルのスタンダードを大幅に更新してしまったと言っても過言ではない"Venomous Vixens"
キンバリーの代名詞、そしてデビュー作にしてバンドの代表曲になってしまったオールタイムメタルのお手本"The Warrior Princess"
まるでアニメのオープニング曲の様な出だしにツカミはOK。アレキシのメロディが華麗すぎるほどに舞う"Beware the Heavens"
曲数こそ70年代のアナログ盤並だが、「コレコレ。こういうのでいいんだよ」を地で行く王政復古型ヘヴィメタルは、北欧の実力者達による当然の結果とも言える。
しかし歴史上の偉大などのヴォーカリスト達にも似ていないキンバリー・ゴスという女傑の熱唱があったからこそ、古臭さを全く感じさせないながらもどこか既視感のある耳あたりの良い直球ど真ん中メタルが完成したのではないだろうか。
この作品を聴くと初めてヘヴィメタルを聴いた日の興奮を思い出す。
幼少の頃"Aces High"を初めて聴いた時のように、「ヘヴィメタルを体験する歓び」を改めて確認させられた。
この作品以降の2000年代にも、メタルシーンにはARCHENEMYのアンジェラ・ゴソウ、EVANESCENCEのエイミー・リー等、様々な歌姫が登場するわけだが、女性によるデスヴォイスがさほど珍しくない現代でも、キンバリーの様な男共を圧倒するロックヴォーカリスト然とした女性は現れていない気がする。
女性ヴォーカリストならではの魅力をウリにするのもいいが、時には男共をクサリで繋いで総奴隷化する勢いの馬鹿力アマゾネス的ヴォーカリストがいたっていいんじゃなかろうか。
SINERGYの活動が絶望的な今、キンバリーの復帰を望んでいるのは私だけではないと思うのだが、いつの日か「Bitch is Back!!」の合言葉と共にメタルマドンナ旋風を巻き起こして欲しいものである。

人気ブログランキング
0 件のコメント:
コメントを投稿