音楽を何のために聴くかは、人それぞれである。
純粋な鑑賞、ただのBGM、高揚感獲得、雰囲気作り、現実逃避…あらゆる効果が認められるツールではあるが、やはり形のないこういったモノに期待するのは
魂にどう作用するか
という点が根底にあると思われる。
音楽はモノに変えられない。
現金・貴金属・不動産など形あるモノは増えたり減ったりするが、音楽は体験すると頭の中に刻み込まれる。1度魂に響いたものは、その人間の価値観にすら影響を及ぼす。
その中には、「マジでヤバいもの」、「今後の人生に禍根を残しかねないもの」もある。
そういったある意味「特級呪物」的な音楽を私の拙い体験から紹介してみたいと思う。
勿論これら以上のモノも沢山あるだろうし「ヌルい!」と仰る向きもあるかも知れないが、これらを聴いて何にも感じないのであればこれらを凌駕するモノをどうか教えて欲しい。
なんせ私が聴いてるジャンルの幅はかなり狭いんだから。
LEVEL1 KORN
「ISSUES」
世界中を負の感情の嵐に巻き込みかねない程の巨大なネガティヴさが渦巻く作品である。
第一印象として初期の頃より洗練されて聴きやすくなった…とも思えるが得体の知れなさを武器にしていた初期に比べて、パーソナルな面を最大限音楽にそっくりそのままわかりやすく転化したという点は全作品を見渡しても随一。
その陰鬱な音世界からイメージされるのは、何処までいっても狭くて暗い部屋の片隅で膝を抱えてすすり泣くジョナサン・デイヴィス少年である。
イジメ・虐待経験がある人達ならば感応してしまう恐れがある程のトラウマヘヴィロックの傑作。
辛すぎる過去がある方は聴かない方がいいかも知れない。
LEVEL2 MORBID ANGEL
「Gateways to Annihilation」
デスメタル古代神による6枚目。
デスメタル一番の肝である「邪悪さ」「おぞましさ」に「荘厳さ」をプラスした魔王降臨を予感させる堂々たる音楽性はそのままに、コズミックホラー要素を大量投下。
ギタリストが「アザトース」を名乗っている以上それまでにもそういう要素はあったのだが、今作における「名状し難き恐怖感」は別次元である。
ピート・サンドヴァルの鬼神ドラミングは控えめなものの、ミドル~スローテンポを中心に醸造される雰囲気は、「超巨大な何者かによって人類滅亡がもたらされる」的な悪夢を抜群の解像度をもってイメージさせた。
スピードに頼らずともデスメタルは充分に呪われた音楽である事を証明した、人類にとって痛恨の1枚である。
地球のはるか上空、大暗黒宇宙に吸い込まれながらこの世の終わりを俯瞰で体験して欲しい。
LEVEL3 TYPE O NEGATIVE
「Bloody Kisses」
ゴシックメタルというとやはりヨーロッパ勢を思い起こしがちだが、アメリカン・ゴシックと言えばこのバンドである。
大都会と大自然。
相反する要素を感じさせるその異質なサウンドはピート・スティールの最低音域を這い回るヴォーカル、ケニー・ヒッキーのザラついていながらも荘厳なギターによって纏められており、"Christian woman"の様な極めてヨーロッパ的な題材も無理なく自らの血肉として表現している。
そしてこの作品を特級呪物たらしめているのが「闇の深さ」である。
ネオン街の夜の暗さ、深い森の暗さ、あらゆる闇を含んだ「夜の美しさ」がこの作品を支配している。
愛猫を亡くしたときに書かれたという"Bloody Kisses"の悲痛な叫びを聴くと、まるで闇と死が側にあるかのように錯覚してしまう。
都会・超自然・宗教・愛・死・官能・自虐・諦観・厭世、あらゆる要素を飲み込んだ闇は大きくも温かい。
貴方も闇の沼にハマってみてはいかがだろうか。
LEVEL4 THORR's HAMMER
「Dommedagsnatt」
ドゥーム・ヘヴィドローン界のスーパースター、グレッグ・アンダーソンとスティーヴ・オマリーらによる活動期間僅か6週間の伝説のデス・ドゥームバンド。
邪教の儀式を思わせる詠唱から始まるそのサウンドは、当時17歳の交換留学生だったランヒルドという女性ヴォーカリストのインパクトに尽きる。
勿論、後のSUNN O)))やBURNING WITCHを結成したグレッグとスティーヴの功績も大きいのだが、希望の欠片もない絶望的リフ&リズムをバックに負のオーラとこの世の邪悪を全て背負ったかの如く五体投地で呪いの言葉をこの地に浸透させるランヒルドの地獄グロウルは、映画「エクソシスト」のリーガンどころではない悪魔少女っぷりで当時の好事家を震撼させた。
70年代由来の原初ロックの魅力を継承する方向のドゥームではなく、あくまで「Doom」という言葉本来の意味を忠実に伝えるスタイルで聴き手の精神を殺しにかかるウルトラヘヴィ級呪物であり、ヘヴィドローン隆盛の立役者としてこれからも神格化されてゆくであろう。
LEVEL5 boris
「Flood」
約束してくれ。
できるだけリラックスした状態で、そして爆音で聴いて欲しい。
水とはかくも表情を変えるものなのか。
空を反射しその透明性を持って静かにたゆたうのかと思えば、時には茶色く濁り澱んで生物には太刀打ちできない程巨大に荒れ狂う。そして無慈悲に無自覚に命を奪うことすら辞さない。
「水の追体験」と言えば陳腐かもしれない。そしてかなり人を選ぶ音楽である事も間違いない。しかし眠くなる程の反復・静寂を超えた先に朦朧とした感覚、不思議なシンクロ感が待ち受けている。
聴き終わった後にドロドロに溶けて何者でもなくなった自我を発見するのを快感だと感じたのなら、おめでとう。貴方はこの作品に選ばれたのだ。
ハマる人は人生をかけてハマる。
あの体験をもう一度、もう一度…と言い続けて15年の私が言っているのだから間違いない。
「人生に禍根を残す」という今回の特級呪物の定義に測るなら、これ程人生に影響を受けた作品もそうはない。これを「呪い」と結論づけてしまうのはどうかとも思ったが、私はこれを「祝福」と解釈して受け入れたい。
以上、レベル別でセレクトしてみたが、冒頭でも申し上げた通り重要なのは呪物云々ではなく魂に響くかどうかである。
その結果開いたものが知覚の扉なのか狂気の扉なのかは人によるかもしれないが、人生のお供として死ぬまで付き合えるような音楽と出会えたならそれでいいんじゃないかと思うのである。
いや、死んだとしても魂に刻みつけられたならあの世にも持って行けるんじゃなかろうか?

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